ある人にとってはものすごく価値が高いものでも、他人や家族から見れば無用の長物、というものはたくさんあると思います。

数年前、親族のおばあさんが亡くなった際に、遺品整理で「タンス」の引き取りについて話が回ってきたことがあります。それは15年ほど前におばあさんが購入した、大型の洋ダンスなのですが、確かにピカピカとつやのある木材でできており、見るからに高級なオーラを放っていました。

5年前におばあさんが介護施設に入居する際、家族は大掛かりな整理(ほぼ生前整理ですね)を行ったのですが、生活の大半をぼんやりと眠ったように過ごしていたおばあさんが、そのタンスについて話題が出ると、途端にしゃきっとして「私に何かあったら、タンスは娘の〇〇にあげてちょうだい!」と強調していたそうです。

ですがそのお嬢さん(他家に嫁いだ人)は、タンスに全く興味を持ちませんでした。物を持たない主義の人で、仰々しいタンスに家を占領されてしまうのはとても嫌だったそうです。親族間でタンスが欲しい人はいないかと聞き回った末、誰も欲しがらないので、業者に買取をしてもらったそうです。「お母さんに恨まれてしまうかもしれないけれど、生活の主義は人それぞれだからね」と言っていたのが印象的でした。