以前祖母が亡くなり、遺品を整理することになりました。
小さい頃から特に可愛がってくれた祖母が大好きだったのでショックでした。
祖母には3人の子供がいますがその中で結婚して子供ができたのは私の母だけで私のみ。
たった一人の孫であるだけにたっぷりと愛情を注いでくれたのを私も密に感じていました。
そんな祖母は着物の着付けをしているので仕事の関係でたくさん着物を所持していました。
中には一着数十万もする高価な物もあり、合計すると相当な金額でした。
その中の一つにとても素敵な着物があり気に入っていました。
それも高価な生地で細部にわたり丁寧な仕事がなされた大人用の着物。
当時幼児であった私には当然着ることができない物でしたが、祖母はいつか大きくなったらあげると言ってくれました。
それから30年が経ち、祖母がガンに侵され余命が幾ばくもないとわかってからは終活として色々と整理をしているようでした。
それからほどなくすると、一際丁寧に保管された桐の箱が見つかりました。
箱には「大きくなった○○へ」と自分宛の手紙が添えられてました。
手紙には「遅くなったけど欲しがってた着物です。きっと似合うと思います。大切にしてね。」とありました。
開けてみると、たとう紙に包まれた綺麗な着物がありました。
しかし驚いたのは、30年も前の子供の頃に見たままのクオリティでそこに在ることでした。
子供の頃の自分の言葉を忘れることなく、30年もの間丁寧に手入れをしてくれていたようでした。さらにわかったこととして、祖母は無くなる1週間ほど前に今の自分に合わせて調整をしてくれていました。
まともに動けず、起きていることさえ苦痛な体でも、最後の最後まで自分の事を考えてくれて残してくれた着物。こみ上げる物を感じつつ、一生の宝物ができました。
毎年祖母の命日と誕生日、そして自分の誕生日にはこの着物を着て祖母の墓参りに行き、着物姿を見せています。
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